みらいの約束


泣いたのは
悲しかったからじゃない
今日、また会えたから

桜の咲く季節でも
この町では雪の壁沿いに
観光バスが走っていく
お客さんに手を振りながら歩く、
あの子の姿をいつも見てた

あれから何度目かの桜
何度目かの観光シーズン
町もなんだか元気だよ
時が止まっているのは
卒業式に空いたままの隣の席

あの子の名前が呼ばれた
校長先生も友だちも
みんな泣いてた
私ひとりが泣きもしないで
隣の席に誰かいるのにおどろいて

式から帰って、じんわり
みんな一緒に卒業できたね
はじめて涙こぼれた
今日はほんとにありがとう
来てるなんて知らなかったから

泣いたのは
悲しかったからじゃない
ずっと友だちだからねと
あの子が約束してくれたから

「睡眠薬―詩と短歌―」詩集部分・目次(後半)

16 寺脇の茶屋
17 仮想詩人
18 深夜のテレビ
19 ジャガーを超えろ
20 ともに生きる
21 夜の学校
22 砂の恋
23 詩になってしまう男
24 寂しがり屋のモアイ
25 マリンスノー
26 あなたのように
27 日本人形
28 ペンフレンド
29 中年男性
30 第0章

「睡眠薬―詩と短歌―」詩集部分・目次(前半)

1 今週の殺人
2 サバイバル・ゲーム
3 風
4 四人部屋
5 耐えられない私
6 迷路
7 ある夜の権力論
8 新宿の女子
9 半獣人
10 十年間
11 温泉旅館の訳あり客
12 再生
13 X判事の少数意見
14 独裁者
15 村の掟

でんぐりがえり


アパート窓の鈍い光に手を引かれて
早朝電車のごろごろ走る音が
起きろ起きろと言いに来た

ちょっと背中が痛い
ベッドの上で
でんぐりがえり
してみたけれど
もうこの部屋のどこにも
きみはいないんだね

窓の鈍い光に励まされても
でんぐりがえりだけの朝です


※電子書籍の詩集「精神病院を退院したら詩が書けた―仮名吹(かなぶき)詩集―」(アマゾンkindleストア/新涼文庫)収録作