一つ目宇宙人

叔母が東映さんで仕事をしていた頃、特撮もののゲストで「一つ目宇宙人」の役をもらった。
昔の東映さんは今よりずっと多く特撮もの・変身ものを撮っていた。
ご存じかとは思いますが、今も続く仮面ライダーも戦隊ものも東映さんの作品です。
さて、叔母は両目の上に肌色のテープを貼られてふさがれ、おでこに一つ目を描かれた。
その状態で監督さんから「こっからここまで歩いて」と指示されたのだが、両目が見えないですと叔母が言うと、
監督さんに「ここの目!おでこの目で見てください!」と言われたという。
この監督さんの演出家としてのカラーが出たのか、それとも
そもそも50年前のテレビ変身ものの現場はそういうものだったのかは、部外者の僕にはわからないのですが…。

学級裁判


オカマ、キモいから死ね

2学期から
男子から女子にかわったAさんが
12月に自殺しました
遺書もなく、担任の先生は学級会で
彼女に何があったのか、
生徒たちから話を聞くことにしました

成績優秀のB君が最初に証言しました
授業態度の悪い不良のC君たちが
Aさんの心を黒く塗り潰していた、と

性同一性障がいを理由に
心の上での殺人行為は許せないと
B君はC君を激烈に責めました

オカマ菌つくぞ、近寄るなよ

先生はC君に事実かと問い質しました
C君は事実だと認めた上で言いました
B君とガールフレンドのDさんが
「殺し」の現場を指差して笑っていた、と
直接間接にクラスの全員が
若さの崩壊現象を起こしていました

その時Aさんの遺書が
机の中から発見されました
「誰も悪くありません」と
先生の筆跡で書かれていました

そして
先生も生徒たちも
みんな教室からいなくなりました
どこへ行ったのかわかりません
Aさんの机の花一輪だけを残して。
posted by 仮名吹(かなぶき) at 10:46Comment(0)自作の詩

吾輩


引っ越したら隣家には
猫がいた
百匹いた

この環境に苦しめられ
近所の人たちはみな
地区から去っていった

俺の勝ちだ!と
隣家から男の声が聞こえた
でも最後まで姿は見えず
数日後、警察が
屋敷の主の遺体を発見した



隣に引っ越して来たのは
若い独身の
二人の男たちだった

一人は体の大きなオレを
吾輩と名付けた
もう一人は
来て三日で姿を消した

俺の勝ちだ!と
隣家から男の声が聞こえた
犯罪の臭いがした
数日後、警察が
もう一人の遺体を発見した



吾輩も死ぬのだろう
百匹もいては
殺処分は免れない
こうなることは
前からわかっていたことだ
posted by 仮名吹(かなぶき) at 01:03Comment(0)自作の詩

未来の顔


会えないことは
思っていた以上に苦しく
寂しさから自分の指を噛んだ
血が滲んだ
小物入れから絆創膏を探すこともせず
私は指を舐めた そして
気づけば彼の顔を
思い出せなくなっていた

近所にいた二つ年上の
おにいちゃんはよく遊びに誘ってくれた
彼の頼みだから
モモレンジャーの役も引き受けた
私が転んで膝をすりむいた時
おにいちゃんは砂まみれの血を
ポケットティッシュで拭いてくれた
その彼の顔も もう思い出せない

別れようとしている彼も私の二つ上
あの時のおにいちゃんみたい
優しかったところ
顔の欠けた思い出を残したところ

この手紙を
まだ見ぬあなたに書いています
いつの日か私は血を流すでしょう
そしてあなたの顔を忘れるでしょう
posted by 仮名吹(かなぶき) at 12:02Comment(0)自作の詩