小さな教室のなかで


かわいいと言われようとして
必死になっている男の子がいる
カッコいいと思われようとして
必要以上に突っ張る男の子がいる
みんなもう既に
そこらへんのおっさんと変わらない

このまま
小学校を卒業し
中学校を卒業し
高校を卒業して
場合によっては大学を卒業して
みんな本物のおっさんになっていく

そして嫁をもらい男の子が生まれ
小学校を卒業し
中学校を卒業し
高校を卒業して
場合によっては大学を卒業して
みんな本物のおっさんになっていく

そして――

不倫


先生、社会の公民ってどんな問題が出るんですか?
――政治とか、経済の問題が出るんです
じゃあベッキーの不倫問題とか出るんですか
――え?出ません
  出るはずないでしょう?
じゃあ、あの不倫してた人の問題とか出るんですか
――不倫してた人?あぁ、乙武さんですか
  出ません
じゃあファンキー加藤のW不倫の問題とか出るんですか
――だから出ませんし、
  っていうか、あなた不倫の話好きですね

扇風機から吹く風みたいに
にぎやかだった去年の夏休み
暑さを呑み込んでしまった思い出たち
ふざけた会話も
これはこれでいいように思えるから不思議

今夜はひとり
蚊取り線香でも点けて夜風に当たりたい

聖職者


小学校の教師になりたての頃は
誰よりも子どもが好きでした
それから程なくして
子どもたちと接する時間に耐えることが
銭稼ぎの唯一の手段になりました

一口に子どもといっても
男子児童と女子児童は違う
男子児童は他者を攻撃する
女子児童は自らを責めて苦しむ
私にできることは
何一つない

先輩の先生方は
みな早期退職制度を利用して辞めていった
私はというと
もう十年以上も仕事をせずに学校にいます

大切にしまって


なぁ先生、部活がヤバい
――どうヤバいねんな
一年生が十八人も入った
――女子だけで?
うん
――ええっ、三年生は何人なん
六人
――ええーっ!
  あんたらの中学って強なったんか?
ううん、ぜんぜん強くない
――ふうん、そうなんやぁ

日々の場面のかわいらしさを
大切に心にしまっておけること
「平穏」という言葉には
そんな意味もあるように思えます

プラネタリウム


きみは時々 僕がたてたデート予定も無視して
  ねぇプラネタリウム行こう
でもそんな時にかぎって
科学館のプラネタリウム上映時間が過ぎてて
3Dシアターしかやってなかったね
  プラネタリウムー プラネタリウムー
きみは自動車みたいにブーブー言ってたね

それでも何度かは二人で見上げた人工宇宙
隣できみがわぁわぁ言ってるのをよそに僕は
  (星空って 本当に回転してるのは
  僕らのほうなんだよなぁ)

それからずいぶん経って、今朝届いた手紙
元気にしてるみたいでよかった
いつもきみの大回転に
目がくらくらする思いでしたが
本当は僕が勝手にじたばたしてただけ

そう思うと あの時
謝るべきは僕のほうだったかもしれないね
いや 僕が悪かったです

俺の青春を返せ


父親がいつも口癖のように
「勉強しないと父さんみたいになるぞ」
言われたとおりに勉強したけど
父親の世代よりもみじめな目に遭った
俺の青春を返せ

女にモテないから仕方なく
アイドルイベントに通うようになった
その女の子がある日突然
妊娠して結婚して引退した
俺の青春を返せ

有名私立大学の4回生になって
就活した
でもIT系のブラック企業にしか入れず
3年でボロボロになって辞めた
俺の青春を返せ

今は自分らしく
自分のしたいことだけして
貧乏暮らしだけどなんとか生かされてる
もう青春返さなくていいよ
神さまありがとう