観光名所


この街は観光名所だから
人は記念にお金を落としていく

この街は観光名所だけど
住む人はみな
伝統と慣習に押し潰されて
やさしさを落としていく

そうやって一人また一人と
いのちを閉じていく

溢れんばかりの観光客の
輝く瞳に彩られて
今日も賑わう観光都市
posted by 仮名吹(かなぶき) at 18:28Comment(0)自作の詩

不自由なテレビ、自由な本


テレビの政治討論番組を見ていたら
「あなたの結論がなぜそうなるのか、
その根拠を教えてください」
「それは今テレビですので、
放送法とか名誉棄損とかいろいろありますので、
今ここで申し上げることはできません」

本屋でたまたま見つけた、
そのテレビ論客が書いた本
立ち読みすると
「テレビで言えないこと」ばかり書いてある
そんな本が普通に本屋で売っている
たぶん日本中で売られている

テレビよりも本のほうが
メディアとして自由なのかな
本ばっかり書いて
テレビに出ない政治学者がいるけど
その理由は本の自由さにあるのかなと思った

あなたは今、自由ですか
それとも自由だと思い込んでいますか
posted by 仮名吹(かなぶき) at 12:35Comment(0)自作の詩

ついに


私はついに
隣部屋の大学生のような人に
朝の風のなかで挨拶を返すというよりも、

私はついに
外国人の主婦のような人から
お箸の使い方をけなされてしまった後、

私はついに
  先生、今日もネクタイ派手やわ~
あえて反論しないアプローチやら何やら、

私はついに
今夜こそ本当に
あなた宛ての手紙などではなく

今、ありのままの自分のこころを
人に笑われてもいいから

私は 私はついに
あなたのためにするでしょう
posted by 仮名吹(かなぶき) at 05:26Comment(0)自作の詩

わが家の政治学


誰だ、そこにいるのは
なんだ、おっちゃんか
  お前の政治の話みたいなもん聞きたくもない。
  お前、何や?
  政治学かなんか知らんけど
  字ばっかりの本読んでても一銭にもならんぞ。

それからしばらく経ってからだった
自民党の選挙事務所から出てきた、
おっちゃんを見たのは
  おう、お前か。
なぁおっちゃん、政治家って何する人なん?
  政治家っちゅうのんはな、
  こんなことしたりあんなことしたり
  それで金儲けて偉そうにしとる奴らのことや。

ほな、おっちゃん、政治って何なん?
  え?政治てか?
  そんなん決まってるやろ。
  ……。

木を見て森を見ていないのは
僕だったのかおっちゃんだったのか
posted by 仮名吹(かなぶき) at 21:56Comment(0)自作の詩

行政なんかの


「私は行政なんかの世話になるのは嫌いです」
と言う中年男がいた
その人に、ここにはどうやって来ましたかと聞いた
「車で来ました」
その車は何の上を走ってきましたか
「道路の上です」
その道路を作ったのは行政じゃないんですか?

反権力主義者なのかな
社会に対して突っ張る態度だけは超一流ですね
posted by 仮名吹(かなぶき) at 19:33Comment(0)自作の詩

通訳案内士試験対策セミナー


ひと気のないオフィス街
今日は日曜日だ
三十代になったばかりという感じの
まだ可愛らしさの残るお姉さんが歩いていた
どこへ行くのだろう

彼女が入っていった貸会議室ビル
僕もその玄関に吸い込まれてしまった
ロビーの掲示板には
「9F 通訳案内士2次試験セミナー」

そうだった、そうだった、
僕もこのセミナーを受けるために
新大阪まで来たのだった
エレベータで9階に上がると
三十人ほどの無言の衆が会場外の廊下で
みんな温泉猿のような顔をして
扉が開くのをじっと待っていた

無料セミナーが夢のように終わり
さっきのお姉さんを探したけど
誰も彼も嵐のように一瞬で去ってしまい
さまざまな人生を生きてきた男女が
一時だけ同じ方向を向いた時間は
もはや過去のものとなっていた

お姉さんはもういない
さぁ前を向いて
おうちに帰ろう
posted by 仮名吹(かなぶき) at 03:08Comment(0)自作の詩