秘密の言葉なんて


道端に落ちていた秘密の言葉を
拾ってアパートに帰ったら
僕は自分の言葉を失くしてしまった

その日以後
誰とも会話することができなくなり
仕事も辞めなければならなくなった

職場仲間だった女の子が
心配して訪ねてきてくれた
僕が秘密の言葉ですべてを打ち明けると
彼女は僕の手を握って
ただ何も言わないでいてくれた

二人で暮らすようになったある日
僕が秘密の言葉を切り取って
ゴミ収集所に捨てに行くと
誰かのものだったはずの言葉たちが
山積みにされて
夏のセミのように鳴いていた

言葉の海は無限の色をしている
だからうっかり立ち入ると
永久に抜け出せないこともあります
posted by 仮名吹(かなぶき) at 08:36Comment(0)自作の詩