それから


真夜中ひとり
詩を一つ書き上げた瞬間に
僕は一人目の読者になる

読者とは辛辣なものだ
  こんな詩、ブログに載せたら笑われるよ
返す言葉もなく
作者の僕は加筆修正を施して
その場しのぎを試みる

それでも作者はそれなりに読者に抵抗し
  まぁ…これならいいんじゃないですか
妥協しているのは作者なのか読者なのか

そうして出来た作品を僕は没にしない
もしそうすれば
作者の僕は肩を落とし
読者の僕はざまあみろと笑うからだ
そういう矛盾は避けたいものだ

それからどうなるのかというと
今夜もまたこの国のどこか、一人の部屋で
昨夜と似たような喜劇が始まることでしょう
posted by 仮名吹(かなぶき) at 13:23Comment(0)自作の詩

冬・臨時電車の少女


あれは何年前だったろう
ある寒い日曜日の夕方
TOEICが終わってくたびれたから
少しでも早く帰ろうと
ちょうど来た臨時電車に僕は飛び乗った

長い座席には疲れた人々のなかに
十七、八くらいの年格好の少女が座っていた
透き通りそうなほど色が白く
長い髪はキャラメルのような明るい茶色で
服は濃紺の、昔の西洋貴族の普段着のようだった

一見して目立つ子なのになぜか
車両内の乗客は誰もその子を見ていない
僕は何度か目をやったが
気のせいかとも思ったが
やはりその子はじっと僕を見ていた

この話を聞いた自称「心霊研究家」の友だちは
その子の姿はお前一人にしか見えてなかったのかも
などと思いつきで勝手なことを言っていた

白く寒い空気の中、僕は先に電車を降りた
その時、彼女は座席の背もたれから背中を離し
背筋をぴんと伸ばしたまま
下車する僕を無言で見送り続けた
なぜそんなことをしてくれたのか
もちろん今もわからない

だからそれがお前の守護天使なんだよと
心霊研究家はふざけ顔で言う
でも今度ばかりは
こいつの言葉を信じてみるか…

それからというもの僕は同じ路線に乗るたびに
白い冬が来るたびに
車両内にあの少女の姿を探している自分に気づく
たぶん二度と会うこともないのに
posted by 仮名吹(かなぶき) at 00:03Comment(0)自作の詩

大学出てすぐ路上ライブ


  えー、何て言うか、
  今から歌いまーす!
  拍手ーっパチパチパチ

とある詩人が死んだ翌日から
私たちは話し合って路上ライブを始めた
詩人が好きだったコスプレを着て
詩人が好きだった曲に合わせて歌い踊り
ミニスカから太ももをこれでもかと出し
週に一度
中年男の視線の先で悪魔の子になる

  って言うか、
  今から歌いまーす!
  拍手ーっパチパチパチ

とある見物客が毎週
無言で来てくれてるのを知ってるけど
私たちは話し合って気付かぬ素振りで
どのお客にも平等にバイバイと手を振る
詩人がいつも言っていたのは
ろくに歌えず踊りも下手なら
せめて笑顔の達人になれ、だった

先生見てますか
私たち派遣事務の仕事しながら
今こんなふうに命を消費しています
posted by 仮名吹(かなぶき) at 13:12Comment(0)自作の詩

やさしさ作戦


この作戦に綿密な計画はない
したがって勝算もさほどない
そればかりか
この作戦に参加するのは私一人だ

最新兵器がこれでもかと投入され
家族を国に残して
命がけの任務につく大勢の兵士がいる
彼らほど自分を恐れている人々はいない

私の作戦は誰も殺さない
誰も死なない
世界の中で人とつながりたい心がある限り
世界の中に無数のやさしさ作戦がある

どんなに孤独な戦いだとしても
この作戦に終わりはない
私たちはやさしさを武器に戦い続け
そして互いにつながり続ける
posted by 仮名吹(かなぶき) at 03:46Comment(0)自作の詩

かいじゅう


へんしんヒーローが
ジャーッと はなつ、
なないろの こうせんを あびて
オレンジいろの ほのおに つつまれ
さいごは ばくはつ するために
おれたち かいじゅうは
うまれてきた

でも いちどくらい
じぶんの しっぽの はじっこを
ちぎって それでつくった、
かわいい ペットを
おんなのこに プレゼントして
いっしょに さんぽしたいよ

おれたちが
こうえんを さんぽしたら
みんな おびえて にげるのかなぁ
こどもたちの ひめいを きいて
へんしんヒーロー とんでくるかな

なないろの こうせんを あびても
ばくはつしない かわりに
コンクリートの きょだいな
かいじゅうの ぞうに なって
こうえんであそぶ こどもたちを
みまもるように しぬのも いいな
posted by 仮名吹(かなぶき) at 01:22Comment(0)自作の詩

遠距離のふたり


もうこれ以上
わたしに優しくしないで
それだけ別れがつらくなるから

もうこれ以上
わたしに何も言わないで
明日がきても言葉が残るから

もうこれ以上
わたしの隣を歩かないで
あなたの影に抱かれたままだから

束の間の京都
これからまたひと月
あなたがいない夜に限って
溜め息さえも渇いていくのです
posted by 仮名吹(かなぶき) at 00:02Comment(0)自作の詩