ふじ子さん


ふじ子さん
茶色い写真の父、継母、そして隠れたあなた
三人がこの世を去った今だから
私はこの詩で
あなたのこころが真実だったことを信じます

私は物心ついてからは継母に育てられた
そして彼女が実母なのだと教えられた
ふじ子さん
あなたの恋はふとしたことから始まった
あなたの愛はひとすじの路だった

だから何かが壊れたとき
明治の家族法のために私の親権も持てず
この家を一人で去らねばならなかった、
ふじ子さん
あなたのことをいつか
お母さんと呼ばせてください

父も継母も祖母も
みんな私に優しかった
私は誰も責める気になれません
私はただ、ふじ子さん、あなたの明るい声で
幼かった私のことなど聞いてみたいのです

掃除の庭から白い空を眺めていると
いつか願いがかないそうな気がする

朝が来るから


ほら、涙がこぼれ落ちそうになるのを
懸命に堪えているときの
少女のような顔をした朝が

泣きたいのはこっちですよねと
隣席の中年男が僕にささやく
たぶん何かの被害者面をして

昨夜からの集会は日付が替わっても
一向にまとまる気配すらない
みんな始発電車で逃げ出すつもりなのに

そりゃそうだ
女の子ひとり泣き止むことさえ
滅多に実現されない世の中なのだから

そんな朝を
もう何千回迎えてきただろうか
そんな人々を
あと何千回電車は乗せるのだろうか