ふじ子さん


ふじ子さん
茶色い写真の父、継母、そして隠れたあなた
三人がこの世を去った今だから
私はこの詩で
あなたのこころが真実だったことを信じます

私は物心ついてからは継母に育てられた
そして彼女が実母なのだと教えられた
ふじ子さん
あなたの恋はふとしたことから始まった
あなたの愛はひとすじの路だった

だから何かが壊れたとき
明治の家族法のために私の親権も持てず
この家を一人で去らねばならなかった、
ふじ子さん
あなたのことをいつか
お母さんと呼ばせてください

父も継母も祖母も
みんな私に優しかった
私は誰も責める気になれません
私はただ、ふじ子さん、あなたの明るい声で
幼かった私のことなど聞いてみたいのです

掃除の庭から白い空を眺めていると
いつか願いがかないそうな気がする
posted by 仮名吹(かなぶき) at 20:48Comment(0)自作の詩

朝が来るから


ほら、涙がこぼれ落ちそうになるのを
懸命に堪えているときの
少女のような顔をした朝が

泣きたいのはこっちですよねと
隣席の中年男が僕にささやく
たぶん何かの被害者面をして

昨夜からの集会は日付が替わっても
一向にまとまる気配すらない
みんな始発電車で逃げ出すつもりなのに

そりゃそうだ
女の子ひとり泣き止むことさえ
滅多に実現されない世の中なのだから

そんな朝を
もう何千回迎えてきただろうか
そんな人々を
あと何千回電車は乗せるのだろうか
posted by 仮名吹(かなぶき) at 11:46Comment(0)自作の詩