吾輩


引っ越したら隣家には
猫がいた
百匹いた

この環境に苦しめられ
近所の人たちはみな
地区から去っていった

俺の勝ちだ!と
隣家から男の声が聞こえた
でも最後まで姿は見えず
数日後、警察が
屋敷の主の遺体を発見した



隣に引っ越して来たのは
若い独身の
二人の男たちだった

一人は体の大きなオレを
吾輩と名付けた
もう一人は
来て三日で姿を消した

俺の勝ちだ!と
隣家から男の声が聞こえた
犯罪の臭いがした
数日後、警察が
もう一人の遺体を発見した



吾輩も死ぬのだろう
百匹もいては
殺処分は免れない
こうなることは
前からわかっていたことだ

未来の顔


会えないことは
思っていた以上に苦しく
寂しさから自分の指を噛んだ
血が滲んだ
小物入れから絆創膏を探すこともせず
私は指を舐めた そして
気づけば彼の顔を
思い出せなくなっていた

近所にいた二つ年上の
おにいちゃんはよく遊びに誘ってくれた
彼の頼みだから
モモレンジャーの役も引き受けた
私が転んで膝をすりむいた時
おにいちゃんは砂まみれの血を
ポケットティッシュで拭いてくれた
その彼の顔も もう思い出せない

別れようとしている彼も私の二つ上
あの時のおにいちゃんみたい
優しかったところ
顔の欠けた思い出を残したところ

この手紙を
まだ見ぬあなたに書いています
いつの日か私は血を流すでしょう
そしてあなたの顔を忘れるでしょう