先生、叱らないでーある宇宙のはなしー


  Ⅰ

夏休みもあと十日
そろそろ宿題の工作を作らなきゃ
めんどくさいなぁもう
僕は子ども部屋に舞い散る塵の一つに
懐中電灯でピリピリ光線を当ててみた
すると「ポン」という破裂音がした

十日後にはその塵は
工作を入れて持って行く段ボール箱大の
黒いモヤモヤに膨れ上がっていた
その物体の中から
「神よ、神よ」というかすかな声が聞こえた

顕微鏡で黒いモヤモヤの中を覗くと
ミクロな球体が浮かんでいて
「神よ」はその球体に棲む微生物の声だった
下等生物どもは球体を「地球」と呼んでいる
「神」って僕のこと?

変なもの作っちゃったなぁ
大型ゴミに出しちゃおうかな
でも明日から二学期だからもう仕方ない
こんなものでも持っていくか…
先生お願い、叱らないで

  Ⅱ

あれから僕は大人になった
大人と呼ばれる年齢になった
黒いモヤモヤがその後どうなったのか
もう思い出せない
学校から持ち帰った後、
母がゴミに出してしまったのかもしれないし
母が死んだ後のこのゴミ屋敷のどこかにまだ
埋もれているのかもしれない

もうすぐボランティアさんたちが
不用品整理に来てくれるから
ひょっとすると見つかるかもしれない宇宙。
そしたら「神」に祈る下等生物どもに
何か話しかけてみようか
それともごめんなさいと
今度こそ捨ててしまおうか

「神よ」と祈られても
僕には何もないよ
叱ってくれた先生さえ遠い昔の話

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