人魚姫


花嫁衣装を脱ぎ捨て
水着になった君は
そのままプールに飛び込んだ
貸切りプールで披露宴をというから
何かやるとは思っていたが

ところがそれが君の最後の姿だった
消防が出動しプールの水を抜いて、
隅から隅まで調べたが
金色の髪の毛一本見つからなかった

僕は他の女性と結婚し数年が経って
海辺の街に転勤になった
ある夜一人で港を歩いていると
防波堤に腰かけて
悲しい外国の歌を唄う君を見つけた

僕は気づかぬふりをして通り過ぎた
それからどうやって
家に戻ったのか覚えていない

激しく後悔した僕は
次の夜も港へ向かった
君はもうどこにもいなかった
ただ夜風に乗って
悲しい外国の歌声が僕の頬を撫でた

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