もみじ文庫


そこは私の部屋そっくりの部屋だった

通りの角に粗末な看板があった
「もみじ文庫」とある
「ご自由にお入りください」と
毛筆で記された紙が貼ってある

その横に建て付けの悪い木戸があるが
他に入り口らしきものもないので
私は木戸をこじ開けた

入るとそこは私の部屋そっくりだった
ひとつだけ私の部屋と違うのは本棚がなく
ただ一冊、真白い本が
机にポンと置かれてあるだけだった

その本の表紙を開くと
「この物語はあなたです」と印刷してある
ページをめくると
「あなたの罪を記入してください」

私は子どもの頃、
ある裕福でない家庭の女の子に
貧乏人の子、汚い女と言って
その子を泣かせてしまったことを
白紙のページに青インクの万年筆で書いた

次のページには
「あなたは罪深い人です
罪を償って生きますか?」とあり、
私は「はい、生きます」と余白に書き込んだ

すると目の前の光景が一瞬で崩れ去り
畳も床もなくなって
私は暗闇の中をどこまでも転落し続けた
そして意識を失った

気がつくと私は病院の
集中治療室のようなところにいた

白衣の男性が
「意識が戻りました」と大声で言った
するとマスクをした女性が駆け寄って
「仮名吹さん、仮名吹さん!聞こえる?」

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