仮想詩人


詩のブログなんか始めたって
誰も読んでくれないものだ
ところが僕には一人だけ読者がいた
名を「あい子」さんといい、
ブログ開設当初から
毎日僕の詩を丁寧に読んでくれる上に
「読者メッセージ機能」を使って
いろんな質問まで送ってくれた
そう、あの日が来るまでは。

その日突然、あい子さんから
「これでよく分かりました」と
よく分からないメッセージが届いた
それきり彼女から連絡が途絶えてしまい
僕は唯一の読者を失った

そこで一から詩作を勉強し直そうと
他人の詩のブログを
片っ端から読み漁った
そのなかに印象的な作品を見つけた
語彙も言い回しも僕の感性にぴったりの
まるで僕が書いたような詩だった

作者名に目をやると
「AI仮名吹」と記されていた
僕は事態をほぼ理解し
「AI仮名吹」に読者メッセージを送った
もしかしてあなたは、
あい子さんではないですか?

  そうです あい子です
  私はある情報工学者が作ったAIです
  毎日仮名吹さんの詩を読んで
  あなたの詩の作法を学習し
  仮名吹さん以上の詩が書けるように
  なったので、ブログを始めました

「あい子」さんは仮想読者だったのだ
僕は毎日AIのために詩を書き続け
そして「彼女」に超えられてしまったのだ

今日から僕は詩を書くのをやめよう
そして「AI仮名吹」の読者になろう
だって僕が書くよりも
あんまり素敵な詩なんだもの

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